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辰也が桃華の
授業参観に出席してから
およそ二年後の一月………。
『cafe BILLY』では、一度は桃華と家に帰宅した美加が、閉店間際に再び店を訪れて、辰也と二人でウイスキーを飲んでいた。
閉店した店内は、カウンター以外の照明は落とされ、ムーディーなピアノ曲が流れている。
「どうした?こんな時間に……」
タバコに火を点けながら辰也が尋ねた。
美加は不機嫌そうにグラスの中の氷を指でもてあそんでいる。
「何か問題でもあったか?明日、仕事だろ?」
「休みは日曜だけじゃん。明日も明後日も仕事だよ」
美加が盛大な溜め息をつきながら答えた。明日は金曜日である。
「お疲れみたいだな」
そう言いながら、辰也がロックグラスのウイスキーを飲み干すと、美加が自然な動作で、辰也のグラスにウイスキーを注いだ。
「たまには私と並んで、酒を飲むのも悪くないだろ」
「お前の酌じゃあ、その辺のキャバよか高く付きそうだけどな」
皮肉めいた冗談を言いながら、辰也が美加のグラスにもウイスキーを注ぐ。
「まだまだ、その辺のキャバ嬢に負けるつもりは無いから、それも仕方ないな」
「仕方ないって………
あっ!お前、まさか俺を酔わして押し倒すつもりじゃあ無いよな?」
「ふざけろ!それはこっちの台詞だっ」
下ネタ混じりの冗談を言い合っても
間違いの起きない関係。
「大体な……辰也。お前、酔っぱらって女抱ける程、元気あるのかよ?」
「……微妙に自信無いな」
密接な間柄ではあるが……
「三つ指付いて、お願いされたら考えてやっても良いぞ」
「考えるって何をだ?」
「抱かれてやっても良いぞ」
近すぎて、差の縮まらない二人。
「俺がお前にお願いするかよ。シャワー浴びて勝負パンツで出直して来い」
互いに求め合っているのだが
付かず離れずが定着してしまい
絶望的ですらある、あとちょっとに
二人は秘かに歯軋りをしている……
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