48人が本棚に入れています
本棚に追加
(クソっ!辰也のアホ野郎……
こっちは、シャワー浴びて勝負パンツだっうの!ビシッとメークまでしてんだろー!!)
「ったく……美加。飲みに来るのは良いけど、何でスエットの上下着てんだ。
もうちょっと色っぽい格好で来いよ。そんなんじゃ欲情しねえよ」
「えっ!?…あっ!
……し…仕方ないだろ。風呂上がりにくつろいでたら、急に飲みたくなったんだ」
「風呂上がりに、わざわざ化粧してスエットで来たのかよ」
「───」
勝ち誇ったように鼻で笑う辰也と、真っ赤な顔でうつ向く美加。
今まで何度となく繰り返されて来た光景である。
八割方は美加の方が辰也に誘いをかけるのだが、決まって辰也はそれをスルリとかわす。
大抵は気付かない振りをしてのスルーなのだが、たまに今回のように辰也は美加をやり込める。
その結果、稀に辰也が美加にモーションを掛けた時に、辰也は美加に倍返しとも言える攻撃を喰らい撃沈してしまうのだ。
負けん気の強い、美加の性格を熟知している辰也ならば、本来はこのように美加をやり込めていなければ、二人はとっくに結ばれている筈である事も承知している。
例え、美加が誘いを掛けて来ても、それさえかわしてしまえば、美加は強引に一線を越えられる性格では無い事も辰也は承知の上である。
つまり
美加を愛してはいるが、何故か美加と結ばれる事を避け続ける辰也。
いつまでも縮まらない二人の関係は、辰也の矛盾した行動が生み出した結果だった。
最初のコメントを投稿しよう!