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「この町同様に、中学も相変わらず悪いのか……しかし、入学早々の奴に絡むとは、ふざけたガキ共だな。怪我は?」
桃華の通う中学校は、辰也と美加の母校である。
言いながら、辰也が心配そうに顔をしかめた。
「金髪の人が助けてくれたから大丈夫だよ」
絡まれたと言うのに、何故かうっとりした様に答える桃華を、辰也は不思議に思った。
「金髪で竹刀持ってたって、そいつも不良なのか?……桃、怖く無かったのか?なんだか嬉しそうな顔をしてるぞ」
「マリちゃんって言うの」
「マリちゃん?」
「助けてくれた先輩の名前。マリちゃんはママがフィリピン人でハーフなんだよ。マリちゃんもパパ死んじゃったんだって……あっ!マリちゃんは剣道部なんだ」
「……やけに詳しいな」
「私、マリちゃんと友達になったもん。剣道部に入っちゃった」
フィリピン系に金髪は居ない筈。つまり、マリと言う少女は結構な不良なのだろう。
不安には思ったが、それ以上に桃華の口から『友達』と言う言葉を聞いたのが嬉しかった。初めての事である。
その夜、辰也は美加と相談して、桃華の動向を見守る事にした。
桃華が初めて作った友達である。桃華の人を見る目を信じてみようと言う結論に達した為であるが、辰也も美加もマリと言う少女に興味津々だった。
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