桜流

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何事も無く、隆円に護符を授かった三人ではあったが、封印の儀式の最中、桃華が突然にコクンと頭を垂れた。 (どうした?寝たのか?) 気にはなったが、辰也自身も猛烈な睡魔に襲われており、耐える事も限界に近かった。 隆円の唱えるマントラが頭の中で反響している。 マントラの反響と共に、急に辰也の視界が暗転した…… (ん!?……ここは何処だ?) 気が付くと辰也は、闇の中を歩いていた。 漆黒の闇。何も見えない世界である。 上下左右の感覚すら、おぼつかないが、足が大地を踏み締める感覚は確かな物であった。 理由はわからないが、辰也は闇の中を歩いていたのである。 (桃。美加。 隆円……) 誰も居ない。 (みんなは何処だ? これは夢なのか?) 不安感が押し寄せたが、とにかく足を進めた。 どれくらい歩いたのだろう。 (もう歩けねえ!) 疲れ果てて、仰向けに寝そべった辰也の視界に、白い小さな物が映った。 白い小さな物は、仰向けに寝た辰也の前方、つまり上空より、フワリフワリと舞い降りると辰也の頬に落ち、頬を濡らした。 やがて白い小さな物は、次々と上空より舞い降りて来た。 「……寒いな」 辰也が呟きながら飛び起きた。 白い小さな物の正体は雪である。 漆黒の闇の世界は白と黒の世界に変わった。 辰也は再び歩き出した。 無性に寒かったが、不意に右手に微かな温もりを感じた。 気が付くと辰也は桃華と手を繋ぎ歩いていた。 「桃!」 嬉しさのあまりに辰也が声を張り上げると、桃華も嬉しそうに微笑んだ。 「桃。ここは何処だ?何で俺達はこんな所に居るんだ?」 「ここはお姉ちゃんの世界だよ」
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