Necktie

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「いくらなんでも、嫌いな奴に、しかも男になんて、キスなんかしねえし。ネクタイだって、あんたに直してもらおうと思ったから、今日も曲げてきたんだ」 「………からかって…るのか?」 やっとリアクションしたと思ったら、それかよ。 いや、これは俺の日頃の態度が悪いんだろうな。 右手で水原さんの左手首を掴み、そのまま俺の胸へと誘導する。 「……分かる?すっげぇ、ドキドキしてんの。今だって、あんたにキスしたくて堪らないんだよ。それくらい好きなんだ」 自分の心の内を晒しているようで、なんだか気恥ずかしい。 けど、そんな事を言ってる場合じゃねえ。 いつ、誰が乗ってくるかも分からないエレベーター。 話を中途半端に終わらせたくない。 「…その……何て言ったらいいか…」 「分かってるよ。あんたの性格じゃ、今すぐ答えを貰えるとは思ってねぇよ」 きっと、水原さんには時間が必要だ。 考えて、直ぐに行動に移せるタイプじゃない事は、一緒にいた二日間でよく分かった。 「俺だって、男を好きになったのは初めてで……正直、これでもかなり動揺してんだよ。でも……気の迷いとか、勘違いとか、そういうんじゃ、絶対ないから」
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