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*Necktie・6*
…………なんで、こんな事になってんだ?
俺は、いま目の前で起きている出来事が把握できず、ただ呆然と立ち尽くす事しか出来ない。
目の前には、いけ好かない人の顔……。
何処を見ていいのか分からなくて、相手のネクタイを見つめた。
「………ん?……か……せくん…加勢くん?」
呼ばれて、ハッとする。
「大丈夫か?」
目の前の人……水原さんは、怪訝な顔で俺の顔を覗き込んだ。
「だ、大丈夫です」
「そうか?なら、いいが…」
やべぇやべぇ…違う世界に行ってた。
「続きだが…ここの通し方が、前と同じで間違ってる。これだと真っ直ぐにならない」
「はあ……」
朝、俺のネクタイを見た水原さんは、いつもの「ネクタイ、曲がってるぞ」の台詞を口にして、当たり前のように、俺のネクタイを解いた。
何が起きているのか把握できない俺の前で、昨日と同じレクチャーが始まった時は、目眩がした……。
まさか……まさかとは思うが、俺のネクタイが直らない限り、この先ずっとこれが続くのか?
マジで?
どんだけ空気読めないんだ、この人……。
俺は、水原樹という人間を、甘く見過ぎていたのかもしれない。
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