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*Necktie・8*
「…………」
「…………」
車窓いっぱいに広がる、田園風景…。
ガタンゴトンと、電車の揺れる音だけが響く…。
「…………」
「…………」
なんっっっっも、会話がねぇ!
拷問だ……。
拷問すぎる…。
電車が走り出して、約一時間が過ぎた。
その間に交わされた言葉は、片手で指折り数えても余るくらいの少なさだ。
携帯を弄って、この無音状態から逃げ出そうと思ってネットで遊んでいたが、暫くすると圏外が表示されて使えなくなった。
目的地は、かなり田舎らしく、いま乗っている電車が、今日中にそこへ辿り着く、最後の列車らしい。
そういえば、チラリと見た旅のしおりに、『田舎を満喫しよう!』なんて、だっせぇキャッチコピーが書いてあったなと思い出す。
今の時代、携帯も繋がらない辺鄙な場所に社員旅行に行く会社って、どうよ?
そもそも、そんな田舎に行って、何するわけ?
畑でも耕すのか?
稲でも植えるわけ?
ただでさえ、普段の仕事で疲れ切ってるってのに、旅行に来てまで疲れる必要って、どこにあんの?
少しは考えようぜ、おい。
気軽に体験だけして楽しむなんて、ナンセンスだ。
世界の農家の皆さんに、土下座して謝れ。
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