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チラリと、向かいの席に座っている水原さんを見る。
何が面白いのか、ただひたすらに車窓の風景を眺めてるだけだ。
しかも、乗ってる間、ずっとこうだ。
あー……マジで早く着かねぇかな…。
イライラと腕時計を見ると、さっき見た時から、三分しか進んでない。
「田舎…」
「はい?」
突然、窓を見たままで、水原さんが喋り出し、声が変に裏返った。
「田舎の風景…いいな」
……………えっと……それだけ?
「……そうですね」
はい!会話終了ー。
頭の中で、ゴングの鐘の音が響く。
僅か三秒で終わる会話って……。
項垂れたくなる気持ちで水原さんを見ると………。
………一瞬、目が離せなくなった。
いつも微動だにしない、その顔が、少し微笑んでいたから……。
優しい目で、流れ行く風景を追う。
その顔に、一瞬、俺の中にある全ての不満が、消えたように思えた。
そして、その目に釣られるように、窓の外を見る。
…………あぁ。
……そういや、こうやって緑色の風景を見るの、何年振りだろ。
そう思えたら、これはこれでアリな気がしてきた。
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