Necktie

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*Necktie・2* 俺は、加勢大地(かせ だいち)。 入社して三年目になる。 自社ブランドの服を売り込む営業が、俺の仕事だ。 業種のせいもあってか、服装や装いに、比較的緩い会社ではあるが、金髪に黒い肌とくれば、流石に良い顔はされない。 それでも、営業の成績がトップクラスのおかげもあって、黙認してもらえている。 そんな俺に、唯一、さっきのような小言を言ってくるのが、水原さんだ。 ハッキリ言って、営業の成績で言えば、俺の方が上だ。 そんな人に、ネチネチと小言を言われるのもウザいし、何様のつもりだよ、とも思う。 俺に文句が言いたけりゃ、せめて営業の成績を上げてから言ってくれって感じだ。 どんな職場にも必ず一人は居る、大人しくて地味な、優等生が服を着て歩いてるようなタイプの人間。 地道にコツコツってヤツだ。 そんな人生の、どこが面白いのか、全く理解出来ない。 この人、生きてて面白いんだろうか? この人の人生を生きろって言われたら、俺なんて数秒で人生に絶望するに決まってる。 つまり、それくらい、この人の存在が気に食わないし興味もない。 せめて、俺の視界に入らないでくれ。 いや、ほんとマジで。
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