439人が本棚に入れています
本棚に追加
*Necktie・3*
「お前、そりゃ、ひでぇわ」
会社帰りの居酒屋。
同期の百瀬比呂(ももせ ひろ)は、ゲラゲラと大きな声で笑った。
「視界に入るな、って、究極だろ。ないわー」
そう言いながら、イカのゲソ焼きにかぶり付いた比呂は、通りかかった店員に、「生ビール二つ」と追加注文をする。
「お前も、あの人に注意されてみろよ。会えば、ネクタイネクタイって、オカンかっつうの」
「そんなに嫌なら、ちゃんと結べばいいじゃん。なんで、わざわざ言われるように仕向けるわけ?」
「あの人に言われたから、直すってのが気に食わない。俺のポリシーに反するんだよ」
「めんどくせー奴ぅ。言われ続ける方が、ウザいとか思わないわけ?」
「あの人が折れれば、それでいいんだよ。おれから折れるとか、マジでありえねー」
そう言った俺に、比呂は呆れた顔をした。
「意味わかんねぇし。お前、どんだけガキなわけ?恥ずかしくない?俺ら、もう二十五だぜ?」
「うっせぇよ。ほっとけっつうの。あー!ムシャクシャする!ピアスあけてぇー!」
喚き散らしていると、店員が追加の生ビールを持ってきた。
最初のコメントを投稿しよう!