Necktie

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これから来るであろう衝撃に備えていると、先に部屋の中に入っていた水原さんが振り向いた。 その顔は、いつもと同じ、感情の読み取りにくい表情だ。 「その……昨日の事なんだが…」 来たっ!! 言いにくそうにしている水原さんの様子に、自分がフられるんだと確信する。 いや、まあ、限りなくゼロに近い一%くらいの期待が無かったと言えば嘘になるが。 少しぐらい夢見てもいいじゃねえかよ。 木っ端みじんに吹き飛んだけどな…。 「なん…ですか?」 緊張に身体を強張らせていると、水原さんが、真剣な眼差しで俺を真っ直ぐに見た。 「昨日は、聞きそびれてしまったんだが……」 「はい」 「男同士の場合、結婚はどうしたらいいんだろうか?」 はい………? ……いや、ちょっと待て。 ちょっと待てよ? 今、この人、何て言った? 結婚? そう言ったか? そう言ったよな? え? 何が、どうなって、そうなった? え?どういう事? 「えー………もう一度、言ってもらえます?」 「だから、男同士の場合は、結婚はどうしたらいいんだろう?」
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