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(散っていく桜の花びらと、叶さんに対する気持ちが比例しているな――積もるだけ積もってゴミになるという……)
春の暖かい日差しを浴びながら、ぼんやりしていた。
叶さんと(多分)恋人同士になったのに、どうしてなんだろうか。虚しさを感じていた。
――他の人を好きな叶さんごと好きになる――
そう決心したあの日から一ヶ月も経っていた。何度肌を重ねても恋心はつのるばかりで……。
「まだ一度も、好きって言ってもらえないんだよな」
確かに気持ちは簡単に割り切れないものだと分かるけど、会うと何だかイジワルばかりされている。それ自体はイヤじゃない、叶さんの笑顔が見られるから嬉しいんだ。
その笑顔を見て一休さんのオープニングよろしく好き好き言う俺に、叶さんが分かってるからとすっごく不機嫌になってしまう。
照れていると言うレベルは、とうに越えていた。ムダに空回りしている俺が悪い。
「本当、カッコ悪すぎるよな」
俺ってこんなに欲張りな人間だったんだなぁ。叶さんの全部が欲しいなんて。
授業中に窓の外から見える桜を切ない気持ちで眺めてばかりいるので、まったく頭に入ってこない状態だった。それゆえに叶さんの家で課題をすると、叱られてばかりいた。
そんな負のスパイラルから、どうにも抜け出せなかったのである。
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