2人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
1小隊の方で再び炎が上がる。
「対地、対空戦闘用意! 小隊は第2陣地へ移動、事後射撃準備。3班については一部をもって同地を確保! 準備でき次第、1小隊地域に射撃を開始!」
小隊長がいつになく厳しい声で叫ぶ。
車両に榴弾砲がドッキングされ大型車両の唸るようなエンジン音が響きながら次々と牽引された榴弾砲が後方へ下がってゆく。
魔術師め、場所を突き止めたと言うの。
「小隊長!」
小隊長は丘の中腹で小隊の様子を伺っている。
私は榴弾砲の移動を装填手に任せると、背中に掛けた銃を胸の前で構え、小隊長の元へと走る。
舞い上がる炎が足下を照らすも、凸凹とした轍の跡では影になってよく見えない。泥かるんだ土に足を取られ、バランスを崩した。
訓練ではそんなに難しくなかった筈なのに……
「水島、いいかからお前は下がれ!」
小隊長の声が聞こえ、私は銃の弾倉を走りながら装填すると槓杆を引いた。
「敵が来てます!」
炎が上がる丘の向こう側で単発の射撃音がする。
1小隊の隊員が応戦しているのだろう。
「分かってる、相手は魔術師だ。お前は下がれ。下がって東京に榴弾の雨を降らしてやれ」
「隊長がやられたら誰が指揮をとるのですか?」
「それは誰かがやる。俺じゃなくても大丈夫だ」
最初のコメントを投稿しよう!