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「そんな言い訳、聞きたくないですよ!」
稜線の近くまで登っていた。
身体を低くし、肘を使って地面を這うと稜線の手前で止まる。そっと銃を前へとの送り出し、銃身の先だけを稜線の先に伸ばした。
横を見ると、数メートル上に小隊長の姿があった。様子を察したのか、小隊長はもう私を止める事はしなかった。
小隊長は手の甲を私に向けると、何度か、上下左右に振り、敵の位置や味方の状況を伝える。
手信号に従い丘の頂上を見ると、据えられていた重機関銃の銃身が赤く燃え上がり、途中で溶けたのか根元の部分から棒状の年度のように地面に垂れ落ちていた。
異常だった。あの硬い鉄が意図も簡単に熱せられ溶かされている。
それをたった一人で……あり得ない。
人間の力とは到底思えない。
これが魔法の力……
身震いした。全身を悪寒が通り抜けるように恐怖が皮膚の上を這い回る。
視線を戻すと燃え上がる火の中に人影が見えた。
炎の中だと言うのに動揺する様子がない。寧ろ自分の家の中にいるような落ち着きを払っている。
炎がすっと勢いをなくし、中から姿を現したのは同じ歳くらいの青年だった。
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