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「弾着5秒前」
双眼鏡の先に街がある。
打ち上げたいくつもの照明弾が長く空に伸びたビルを映しだし、落下する照明弾はその隙間を縫って消えて行く。
2日間続いた艦砲、野砲の射撃により旧東京は灰になってもおかしくない筈だった。
しかし……
「弾着、今」
観測手の声が上がると同時に、旧東京上空に火花が散る。
遅れて爆発音が響き、横にあった木々が爆風で煽られる。落下する火花は何かの壁にでもぶつかるように急に角度を変え、黒煙を吐きながら旧東京市街の方へと転がっていった。
「効果……ありません」
観測手が双眼鏡を外すと、こちらを見た。
私は持っていた双眼鏡で覗くと、砲撃はビル一つ倒壊させることも出来ず残っている。
「問題ない。砲撃を続行」
苦虫を噛む。
これが噂の物理障壁と言うやつか、実弾兵器の無効化とは相変わらずやっかいだ。
「第1、第2、第3次弾装填、照準誤差修正無し、曳下、射撃用意」
隣にいた特科第2中隊長が無線越しに声をあげた。
無線越しに続々と「準備よし」の声が上がる。
第2中隊長が一度私を見る。目が合い頷いて見せた。
第2中隊長はそれを確認すると、「撃て!」と叫んだ。
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