2019/08/02 13:20 北海道 旧陸上自衛隊 東千歳演習場

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「いいか、戦場において何より大事なのは体力だ!」  伏見教官の声が響く。 「ここで楽をして戦場で生き残れると思うなよ! 旧東京で生き残りたかったら全力で走れ!」  呼吸が荒い。心臓の音が脳にまで響いてくるような感じがする。  目の前には林を切り出して作られた泥の道、必死で走るも足が泥に沈み込んで上手く走れない。  そんな事をしている内に、同じ18式小銃を抱えた水島由香と羽柴義隆の姿が僕を追い越す。  二人はちらりと僕を見ると「先に行くよ」と合図を送る。  僕は、ハアハアと息を吐き二人に返事を返す事も出来ず首を縦に振る事しか出来なかった。 「走れ、走れ、走れ! おらぁ! 山口遅れてるぞ!」  腕が重い。手を振らずに走ると言うのは本当に辛い。  太ももの筋肉がもうぱんぱんだ。  だけど、こんな所で終わりたくない。  二人が次第に遠のいていく。小さなグループを付くって走る集団走。  協力して走る必要はないが、隣に走っているのは同じ訓練学生なのだから気にならないわけがない。  僕だって二人について行きたいし、一緒にゴールだってしたい。  だけど、身体が前に出ない。空気が口から出て行くばかりで、全然呼吸が出来ない。  次第に目の前が白くぼやけてきた。  「絶対に東京を取り戻す」そう決め込んだ筈なのに、父さんと母さんを殺したの魔術師を殺し、妹を救い出す。その為に僕は自衛戦術総隊に入った筈なのに……
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