† 一 †

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「お疑いでしたら、わたくしめの住まうところへ、伴い申しましょう」 女は立ち上がり、中間三名を引き連れて、縁の下に向かった。 当時の武家屋敷、特に大名家の上屋敷などは、現在は大学や庭園、遊園地として残るほど広大な敷地を有していた。 その屋敷の縁の下である。 一行は、気が遠くなるような広さの縁の下を、苦労しながらしばらく進む。 すると…… やがてその一角に、呉座蓙(ござむしろ)を敷いた上に、どこから集めたのか、古い碗や茶碗などが並べられた場所に出くわした。 女は、振り向くと、 「此処が我が家にてございます」 艶然と微笑みを浮かべた。 これには、さすがの屈強な男たちの背中にも、ざわざわと冷たいものが走った。
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