† 前口上・参考文献一覧 †

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ここまでは、よくある話だ。 しかし、鎮衛の非凡な才能は、ここから開花するのである。 鎮衛は、次々と役職を上り詰め、ついには佐渡奉行にまで出世したのだ。 封建社会では、本来あり得ない大出世である。 このことから鎮衛の後ろ楯には、時の老中・田沼意次がついていたのではないかと推測される。 ところが、鎮衛が佐渡奉行に在任中に、田沼意次が失脚するという大事件が起こる。 普通なら、田沼に連なる人脈ということで、鎮衛も役を解かれ、閑職に回されるのが当たり前だが、ここでも後任の松平定信に気に入られ、さらなる出世をするという、異例の人事が行われる。 ――と、トントン拍子の鎮衛の人生だが、ふしぎなのは、その業績が、後世にあまり伝わっていない、ということである。 同じ時代の官僚としては、火付盗賊改方長官・長谷川平蔵のほうが、人足寄場を作るなど、よほどその業績が知られているのに、だ。 では、鎮衛の名前がなぜ後世に伝わっているのか?
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