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大名の奥勤めは、よほどのことがないかぎり、外出などはままならない。
ましてや十五万石の大名家である。厳重な門番の目を掻い潜り、屋敷の外に出るなどは、とても考えられないことであった。
ところが、いくら懸命に屋敷の敷地を探しても、女の姿を見つけることができない。
欠け落ちしたのか、それとも神隠しにでもあったのか、屋敷の者は、途方に暮れるばかりであった。
念のため、女の実家にも使いをやったが、女のふた親は、娘の失踪騒ぎに、むしろ戸惑うばかりだった。
女が姿を消してから、二十日あまりが過ぎた。
その朝、奥女中たちが暮らす上屋敷の長屋の手水場で、奥女中のひとりが手水鉢で手を濯ごうと、ちょろちょろ流れる水に手をかざすと……
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