大家族

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なんだかんだ言ってもこれはいろはの個性な訳で僕も決して嫌いではない、それこそ個性の無い人間のつまらなさと言ったら語るのも面倒。そして何より彼女は人を敬うことは知らなくても人を信じることは知っている。何せこんな僕に付いて来てくれるのだから。言葉は悪いが根は真面目で純粋無垢な中学3年の女の子なのだから。 とまあそん事は思っても絶対に言わないわけ。いろはに知られた日にはそれこそまた何を言われるか解ったものじゃない。 「いろはってさ、猫かぶりの自覚はあるの?」 走りたがっているマカロンを抑えつつそんな会話をふる。 「猫をかぶる?どうして私がそんなことを?」 「それがもう猫をかぶってるんだよ」 いろはのこのしゃべり方には特殊な理由があるのだがそれは少なくともここでは必要ない。それにさっきも言ったがしゃべり方うんぬんの前に僕は素のいろはの方が好きなのだ、毒を吐くがそれも彼女の個性だから。 「別に無理をしているわけではありませんの、このしゃべり方に馴れてしまっただけでして」 何かを思い出したかのようにらしくない顔をしたがすぐにいつもの顔に戻る。 「それに私ふと思ったのですが猫をかぶるっておかしくありませんこと?素の自分を隠して仮面を作る事を猫かぶりと言うのならそれはどっちかと言えば犬かぶりなのでは?猫では少々気まぐれすぎます」 犬というワードになんとなくマカロンに目が行ったがマカロンはまだ子供だからいろはの例えの対象外。いろはもそれに気付きすぐにしまった……みたいな顔をした。 「マカロンは多少やんちゃですがもう少し時が経てば優秀に育つでしょう。なんたって私が主なのですから」 話をそらした感はあったが気にしない方向で。そうそう、猫かぶりの話だった。 「それは置いといて、やっぱり僕は犬じゃなくて猫かぶりだと思うよ?犬かぶりってなんの先入観も無しに聞いたら逆にワイルドな感じをイメージしそうだから」 「ニュアンスの違いですわね。気まぐれな猫をかぶったところでそれは場合によっては相手に負の印象を与えるのではないでしょうか。それにはっきり言っておきますが私は猫なんてかぶっていません……いや、被る必要がないといった方が正論に近いかもしれません」
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