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そして翌日の放課後、僕と結月と七衣と伊澄は理事長室の前に来ていた。
「それじゃあ行こうか、僕らの楽しい学園生活の為の交渉へ」
七衣は理事長室のドアを二回、ノックした。
「生徒会長の七衣純一です、理事長に用があって来ました」
「扉は開いている、入って構わんよ」
声は低いが女性のものだった、どこか不機嫌そうに聞こえたのは気のせいじゃ無いだろう。
「生徒会は裏実行委員の設立で理事長中心の一部のお偉いさんから嫌われている。このぐらい、気にすることはない、じゃ、行こうか」
「失礼します」
中にいたのは初老の女性だった。だが初老の定義は人それだから言っておく、中にいたのは50歳前後の女性だった。
「何かようかな生徒会長七衣、私は暇じゃないから要件は早々と頼むよ」
僕らをまるで見ずに書類に目を通す理事長、忙しいのはあながちウソではなさそうだ。でもまるでこちらを見ないのは教育者のトップとしてどうなのだろうか。
「今年の修学旅行の行先のアンケートの集計が終わりました、今年はスキーや観光を含めた北海道に決まりましたがどうでしょうか?」
「いいんじゃないか? 海外などと言ったら拒否したがそれぐらいなら問題ない、好きにしろ」
「それはありがとうございます理事長殿。それでもう一つお願いがあるのですが」
「……言ってみなさい」
「今年のように三年になって修学旅行に行くのはまれです。ですので今年は二年との合同旅行としませんか?」
「馬鹿いっちゃいけない、二、三年含めて何人いると思っているんだ、その話は却下だ。……あるいはお前さんが生徒会裏実行委員ならあるいは可能性はあったかもしれないが。お前さんより優秀で黒い男はそうはいないだろうからさ」
理事長から見ても七衣の評価は高いみたいだ。それにしてもまるで僕達と目を合わせようとしない、七衣と仲が悪いのかそれとも……
「理事長、お言葉ですが僕より黒い人間なんて沢山いますよ。高校生相手に評価が過ぎます。それに黒くない人間なんていませんよ、僕から言えば金と地位を持って押し付ける大人の方がよっぽど黒いじゃないですか」
あ、分かった。これは七衣が悪い。
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