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七衣と伊澄が静かに理事長室を去った後当然だが残されたのは僕と結月と理事長だった。
「理事長ー、話ってなんですかー?」
「生徒の在学表には顔写真が一人一人あるがこの学校の人数からして顔は愚か名前を覚えるのは難しい。しかし今年から編入してきたって生徒がいたからね、とりあえず名前は覚えたんだ。ここの編入試験は難易度が高いからね」
この学校の特徴はそれぞれの個性を尊重しぞの人が得意とするものを伸ばすと言う校訓を掲げている。その生徒の強みを知るのは時間がかかる故に編入はあまり学校側として望んでない。だから編入試験も凶悪なものとなっている、そんな話を聞いたことがある。信憑性は無いが。
「まさか高校生とは思っていなかったよ、せめて大学生くらいとさ」
「あのーすいません、仰っていることの意味が解らんのですがー」
「早雲(そううん)だろ、あんた」
理事長はにやけてそう言った。結月の正体を知っているのか?
「それは昔の話です、それに私の名前は佐倉結月ですから」
早雲とは結月が昔とある組織で使っていた名前だ。彼女はその組織でネゴシエーターをしていた。彼女の交渉術は優秀だ、それは僕が良く知っている。
「昔一度だけ見た事があってね、その時はもっと大人っぽかった気がするんだがな」
「化粧してそうしないと相手にも舐められるし仲間にもガキっぽいから化粧しろって言われるんですよ。今の私はただの女子高生ですから」
「しかしお前さんの組織と如月財閥は敵対していなかったかな?」
正確には財閥じゃなく僕と敵対していた、だ。
「それも昔の話です。その組織も今はありませんし今の私は三味さんにお世話になっている身分ですから」
「元敵対していた人間と一緒に暮らすとはな。これは強力な力を持つだろう。怖い怖い……」
この人は七衣が言っていたほど簡単な人じゃない、早雲の名前を知っていた時点で危険な匂いがする。早雲(結月)とはそう言う人間なのだから。
「私は別に自分より大きな力はそれほど怖くない。その力の対象がお金なら。しかしその力が才能なら少なからず私は恐怖を覚える、それが格下の人間でもだ。だから七衣は苦手だ、あいつは頭の回転が速いし生徒会長になるだけのカリスマもある。如月、君は七衣以上のものを持っている。それに佐倉、君の交渉力もだ」
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