在る日の日常

2/34
前へ
/312ページ
次へ
季節は6月の終わり、ついこの前まで肌寒かったのに今はもう半袖シャツで汗を掻く季節になっていた。教室にはクーラーがあるが僕はどうやら相性が悪いらしく体調を崩すのでクラスで唯一長袖を着ている状態だった。あと一か月もすれば夏休みという時期まで来ていたがクラスで浮かれている人は殆どいない、浮かれているのは結月ぐらいだろう。 「三味さんに京助くーん、夏休み入ったら旅行に行こうぜー! 私的には海が良い、山は昔虫に刺されたら嫌だぜ」 クラゲに刺されろ。 「海か、悪く無い選択じゃないか。俺は海好きだぜ」 「海ねぇ……もう何年も行って無いな。最後に行ったのは小学生だったかな」 「海は良いよー、根暗な三味さんでも海に行けば解放的な気分になれるから」 「根暗で悪かったな」 だって海行ってもやる事無いし塩水嫌いだし……僕を誘っても面白くないだろう。 「適当にクラスメイト誘った方が楽しいよ、皆で行ってきなよ」 そんな僕の提案は結月と京助の嫌そうな顔で拒否となった。なんで? 「拒否権は無いですぜ三味の旦那、それに今回はクラスでは無くマンションの皆で行こうって思うの。あ、勿論みんな忙しいから夏休み入ってからみんなで空いた時間を作って一泊二日で。絶対に楽しい思い出になるから」 「そうだぜ。こんなみんなで泊まりに行く機会なんて無いんだから」 一週間かけて海外旅行とかなら分かるが一泊二日で海に行くくらいなら高校卒業してからでもいける。って突っ込みは無粋だよな。 「他の皆には聞いたの?」 そんな僕の質問を受けたら結月の顔はみるみるドヤ顔になった。 「そんなの当然じゃん。三味さんが一番手ごわいのは分かっているんだから最後だよ、三味さんが」 僕以外が賛成……これは完全に退路を断たれた。それにそんな笑顔で言われたら断れないな。 「分かった、八月の最初の方で行こうか」 そこら辺の季節になると宿題も終わっていて特にやる事も無くなる。 「よし交渉成立! 可愛い水着買っとかないとなー」 「交渉だったんだ、今の」 らしくないな、結月。 「結月、泊りで行くんだろ? どっかのホテル予約してるのか? 夏休みは早く予約しないと取れなくなるぜ」 「三味さん、どっか別荘とか無いの?」 「おい」
/312ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加