在る日の日常

9/34
前へ
/312ページ
次へ
「空ちゃん可愛いよなー。最近見ないけどどうしたの?」 普通は会わないだろ、中学部の生徒と。 「空は今イギリスにいるよ。カトレ……母さんの実家なんだけど空からしたら留学にあたるのかな」 「あれ、その話から察するに如月はハーフなの?」 「違う、今の母さんは後妻だからね」 「……すまん、考えなしに質問した」 横に座る堺の顔を覗いたら申し訳なさそうにうつむいていた。なんだ、能天気だと思っていたら結構繊細な神経持ち合わせているんだな。らしくもない。 「いいよ別に。ほら、ホルモン焼けたよ」 焼けたホルモンをトングで掴んで堺の皿に移した。 「そうか、悪いな如月。じゃあ、頂くよ」 僕も頂こうかな。もうタン食べたけどなんとなくもう一度手を合わせた。 「ね、ねえ馬鹿兄貴。これ見てよ」 「ん、どうしたの? うはっ」 端の方で何やら話し合っている堺兄妹。メニューなんか見てどうしたんだ? 「なあ如月、ここって結構するのな」 ああ、そういう事か。 「すいませーん」 手を挙げて店員を呼んだ。大きい返事と共にやってきた店員に、 「カルビとロースと……あとご飯を二人分」 「ありっしたぁ!」 オーダーを取って厨房に向かう店員をなんとなく目線で追ってから目線を戻して、 「今日は僕が奢るから。好きに頼んでいいよ」 「でも悪いですよ如月先輩。ここ結構値段しますし」 流石は千晶ちゃん、人間が出来ているなあ。 「別に気にしなくていいよ。どうせ今日は僕の奢りだし値段なんて気にして食べても美味しくないよ。せっかく美味しいって有名なお店なんだから楽しまないと」 「そうですか。ではすいません如月先輩。ごちそうになります」 「ひゅー、三味さんカッコいい! すいませーん、粗挽きウィンナー下さーい!」 「流石お兄さん。じゃあ私はタン追加でお願いなのです!」 お前らは少しは遠慮しろって。
/312ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加