在る日の日常

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「……ねえ、みんなそれ言うけど僕ってそんなに鈍感?」 「たまにわざと言っているとすら思う事があるのです。言いたくは無かったのですがたまに、ほんのたまーにいらっとする事さえあるのです。でも……それでもそれがお兄さんを構成する素材の一つなのですからまあ仕方がないのかなって思うです。不器用で無愛想で鈍感で、でもお兄さんが実はとてもいい人ってことはみんな知っているのです。私も結月もバカ京助も、それにいろはちゃんも……あのメイドさんも、みんな知っているのです。だからお兄さんはそのままでいいかなって思うのですよ。私も最初は空ちゃんのお兄さんだからお兄さんに近づきましたが沢山話す中でちゃんと本当のお兄さんを知ることが出来たのです。最初は根暗な人だと思っていたですが」 僕のコップにお茶を注ぎながらそんな事を小さい声で話すゆん、技術関係以外は無関心だとは思っていたけど中学生なりに考えているだろうな。もしかしたら僕なんかよりずっと考えているのかもしれないんだな。 「すいません学生の話でしたね兄さん」 注ぎ終わったピッチャーをテーブルに置いて目線を結月と千晶ちゃんに移すと微笑えおこぼす。 「佐倉はこれまでの数年間を取り戻すように楽しもうとしているんだと思うのです。佐倉は少し空回りしていると思うですが……彼女なりに頑張っていると思うです。お兄さんは知らないと思うですが結月とは数年前まで一緒に動く事もあったですがその時は明るくふるまっていたですが本心はどうなっていたのだが分かったものじゃないです。年下の私が言うのもおこがましいのかもしれないですがいいことだと思うですよ、学生」 「そんなもんか……」 なんとなく3人で騒いでいる(千晶ちゃんは半ば無理やり)方を見ていると結月と目が合ってしまった。おい、何故こっちに来る。 「ほーら、三味さんも友達ですよー!」 「僕の番号は2番で1番でも3番でもないよ」 「そんなの関係ないですって、三味さんと私の友情……いえ、愛情は不滅ですよねっ!」 なんでそんなに良い笑顔でこっちを見る、それにみんな愛情と言い直しとんだこいつは。 でもそうだな、うん。 「そうだな」 明るくてうるさい時もあるけどこいつに会えたのは案外良い影響だったのかもしれないな。
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