在る日の日常

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「それに俺は霧島さんと約束したからさ。警察になるって」 「霧島さんとの約束……か」 霧島さんは捜査一課の刑事で煙草にサングラスにオールバック、見た目は怖くてどうみてもヤクザなのだけれどもその中身は熱くて恰好よくてとても優秀な刑事だった、僕の命の恩人で人生の先輩と言ってもいい。でも霧島さんは今年の初めに帰らぬ人になった。その時僕は近くにいたけれども最後まで信念を貫き通した人だった。因みに園山いろはの父親で本名は紫観涼、紫観伊澄の叔父にあたる。 「でもさ、もし京助が捜査一課に所属したら沙織さんが上司になるのかな?」 「あ、そうなるか。俺あの人の部下になるのは想像出来ないわ、今あの人いくつだっけ?」 「22歳。でもあの人キャリア組だしどうなるかな、今は警部補だけれどすぐに警部に昇格するでしょ、そこらかその上の警視まで上がれば現場で動く事も少なくなると思うよ」 橘沙織(たちばなさおり)、かつての霧島さんの部下で捜査一課の警察官。真面目で丁寧な人だが感情的になり後先考えずに動くとこがある。高校生の僕たちが言うのもなんだけどまだ若すぎるんだよな沙織さんは。 「もし俺がキャリア組に入れたとして俺が配属されるのは22歳、その時に沙織さんは26だからたぶんあちらさんは警部。ギリギリ現場だろろうな」 「それにあの人は現場好きだから警部になっても係長に上がらずに主任として現場で仕事するだろうし」 キャリア組は昇格が速い分、現場での経験が浅い。主任は現場での責任者として指揮を取るが係長となると捜査本部での仕事が多くなる。沙織さんの憧れていた警察の人たちは現場での仕事が素晴らしい人たちだった。それに沙織さん自体多分出世に興味が無い。なんでキャリア組なのか訳が解らないし周りからしたら迷惑な話だろうなきっと。 「じゃああの人の下での仕事の可能性も十分にあるのか。そこそこ親しいから上司とし敬えるかが心配だな」 「かもな」 「かもな、じゃねーよ。俺は三味が将来どうするかと聞いているんだ。巧みに話をそらしてさ」 いや、聞き返しただけなんだけど。自分が言葉巧みなんて一回も思った事ないし。 「三味はいいよな」 「なにそれ、財閥の御曹司だから就職先に困らないとかか?」 「いーや、違うね」
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