在る日の日常

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コンビニのすぐ裏の細い通り、そこに僕は案内された。 「俺達はこういうもんだ」 渡された名刺は怪しさ全開でまっとうなものじゃ無かった。まっとうな企業ならこんな事しないだろうし。 「……スーツ、暑くないですか?」 和むかな? 「これが仕事だから問題ないよ。それをり兄ちゃん、自分の心配をした方がいんじゃないか?」 和まなかった、やっぱ駄目か。 あ、でも人を見た目で判断するのは絶対にダメな事だと思う。それに痛いのは嫌いだ。 「それで今回はどのような用件で僕は裏路地に呼ばれたのでしょうか?」 「スカウトだよ、スカウト。……あの姉ちゃんが可愛いから気にかけて無かったけどあんたもなかなかかっこいいじゃん、良かったらすぐそこに事務所があるから良かったら寄って行かないかい?」 マズイ、どうやって逃げよう……とても面倒。 「いえ、今日はもう遅いので結構です。また後日この名刺の番号に電話しますから」 「いやいや、すぐそこだからさ。少しで良いんだよ?」 「ですが今日はもう遅いですし、はっきりいって面倒くさいんです」 それではと言って一礼、そのままスーツの大男の横をすり抜けて帰ろうとしたら見事に道を阻まれた。ま、当然かな。 「そう急がなくても良いじゃないか」 すっかりモチベーションも下がった。あ、とても良いこと思い付いたかも。 「あ、じゃあさっきの女の子、結月紹介するんで僕は帰ってもいいですか?」 結月を売ってしまおう、それで僕は帰る。 でもその前に、 「それと不景気かもしれないですけどあんまり危ない商売はお勧めしませんよ? なんなら相談乗りましょうか?」 とっても優しい僕は彼らの相談にのってあげる事にした(一方的)。 「相談はいいんだよ、お前かさっきのねーちゃんもって帰れば結構なお金が入るんだから」 ……そうですか。 「でもお金って何をするのも必要じゃねーか、だからこう考えたんだよ。どっちももって帰れば良いじゃねーか」
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