在る日の日常

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送ってくれるのは正直、ありがたい話だしとても助かるのが紛れもない事実。でも部下に任せて僕達を送って帰るのはどうなのだろう。そしたら橘さん曰く、 「年下でしかも女の上司がいたって現場は仕事がやりづらいだけだよ。私だって警察として命かけて仕事をしたことも昔はあったけど経験してきた時間の長さだけは逆立ちしたって敵わないからさ」 だ、そうだ。橘さんは後先考えず感情で行動してしまうクセがあるってかつての橘さんのヤクザみたいな上司が言っていたけどそれ以上に行動力の高さと心のゆとりがある人だ。はっきり言って警察向きじゃ無いんだよな。それに何より若すぎる。高校生の僕が言えたことじゃないけどさ。 橘さんは今年で22歳、学生で言うなら大学四年生。本当に若すぎる、それが警部って…… 「橘さんさっき警部って言われていたけどキャリア組でしたっけ?」 キャリア組とは凄く砕いて説明するなら国家公務員1類試験という難しい試験に受かったエリートのことだ。キャリア組ならこの歳で警部でも違和感はさほどないけどそれでも最短で23歳にならないと警部には上がれないはずだ。それにキャリア組は普通、警察庁に所属なのに橘さんは警視庁で働いている。正直、もうむちゃくちゃだ。 「三味君、」 「はい?」 「確かに私はキャリア組だけどそこはあまり気にしちゃいけないんだよ、警察は警察で色々あるからさ……」 「…………」 とぎれの悪いその言葉にこれ以上聞いてはいけないような空気が漂い始めた。この歳で警察の闇を見た気がする。 「まぁでもね三味君」 そんな空気のなか次に口を開いたのは橘さんで、 「キャリア組になるのに一番大事なのは繋がりなんだよ。試験に受かったところでその後の面接で落ちたらなんの意味もないからさ。それにもっと早く上に上がらないと霧島さんに追い付きたいから」 「……そうですね」 その霧島さんがさっき話したヤクザみたいな警察官で橘さんのかつての上司にあたる人。素晴らしい人で確固たる信念を持って行動している人だった。霧島さんの階級は警部だからそれだけだったら並んではいるけど人間としては僕も含めて遠く及ばない、そんな人だ。 「因みに元主任は警視だったよ?」 「マジですか……」 警視が捜査一課の主任って、階級と役職があまりにも合っていない気が……
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