在る日の日常

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本当は僕の言葉なんかじゃない、僕の唯一無二の大親友の言葉だ。 ………………、 「そう言えばもうすぐ本格的に夏が来ますねー」 これまでの話の流れを見事に断ち切っての話だった。今までの話との区切りだとは思うけどバッサリと切ったね。彼女らしいと言ってしまえばそれまでだけど。でも本当に彼女らしい、いつもの結月だ。 「そう言えばそうだね」 しかしさっきまで涼しかったのに少しだけ服を汗ばんでいるのも事実、額にも汗が流れる。 「学生生活最初の夏が来るのですよ? 夏休みに体育祭、海が私を呼んでいますよー?」 「海も体育祭も嫌い。海は塩水がべたつくし体育祭は疲れるし面倒」 「うへー、相変わらずすっごいネガティブ思考ですね三味さん」 それってネガティブ思考と言うのだろうか? 「でも夏は嫌いじゃ無いんだ、冬に掻く汗はじわじわして嫌いだけど夏に掻く汗は嫌いじゃ無い、それに夏は格好が楽でいいし」 高3の夏か……僕も結月と一緒で夏及び夏休み、楽しみじゃないと言えば嘘になる。うん、楽しみだ。 「結月は海に行きたいの?」 「いえ、海に行きたいのはあるけどそれはやっぱり三味さんとか皆で行きたいのであって1人で行っても面白くはないから今回は諦めようかな、今年じゃ無くても大学やその先、今の私には時間はたっくさんあるからね」 でも結月が楽しみにしている高校の夏は今年しかない。なんでそんなに遠慮がちなんだか。 「じゃあ皆で行こうよ、海でも山でも旅行でも結月の行きたいところに」 恥ずかしいやら虚しいやら今年の夏休みに予定は無い。去年は忙しくてそれどころじゃ無かったし。 「本当にいいんですか?」 「……僕にはそこでなんで聞き返すのかが全く分らないよ。別に僕は嘘をついて悦を覚える快楽主義者じゃないんだ、今のところ嘘はついていないよ」 「なんだかんだで僕もまだ結月からの信用が無いよね」 それは独り言のつもりだった。結月に聞こえないくらいのふとした発言のつもりだった。でもそれは本心、なぜなら僕と結月はまだ出会って約半年しか立っていないのだもの。
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