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「期末テストが終わってもう夏休みが来る……なんか嫌だな」
それはつまり一学期が終わる事を意味する。もう高校3年の3分の1が終わった。
そんな事を考えている時、僕たちの座っているソファーの横のベッドから物音がした。それが誰のものかは解ってはいたが一応、首だけそちらを見る。そこには体を起こした七衣がいた。
「おはよう七衣、目は覚めた?」
七衣はまるで思考が追いついていないのだろう、周りを何度も見まわしている。気を失っていきなり知らない場所にいたら誰でもこうなるだろう、
「如月君、ここは?」
うつろな目でこちらを見つめる。きっと思考が上手く回ってないな。
「大学病院だよ。覚えてないかな、生徒会室から病院に運んで診査中に気を失ったんだよ。それで検査も終わって今は病室に移って絶対安静。だからそのベッドから降りちゃ駄目だからね」
「病院、ここが……」
VIP専用の病室、病室らしさは微塵も無くそれを辛うじて感じさせてくれるのはかすかに香る薬品の匂い。それに七衣の腕に繋がれた点滴くらい。部屋だけ見ればそこらへんにあるビジネスホテルよりよっぽど立派な内装。
「……………………」
七衣も自分の手に繋がれた点滴に目を移す。その虚ろな目は少しづつはっきりと覚めていく。次第にその目はいつも通りに覚醒して、
七衣は頭が良い、だから逆に次の行動も簡単に読める。僕はソファーからは飛び降りて一気に七衣のベッドに距離を詰める。
「落ち着け七衣、君は過労と肝炎を併発している。絶対安静だ」
「なら家でもいいだろっ、こんな高そうなとこすぐにでも出ないとっ!」
包帯を取って無理やり点滴を取ろうとする。それは危険だっ。
「伊澄君、急いで月乃さん呼んで来てっ」
「いや、その必要はない。色縁、少年を抑えて」
「は、はいっ!」
僕と伊澄君で抑えている所に色縁さんも抑え込みにかかる。元々病弱で倒れた七衣にそこまでの力は無くすぐに諦めた。
「そう暴れるな少年、確か七衣と言ったか。安心しろ、三味の友達から金は取らないさ。もともと君のかかった肝炎は安静にしておけばさほど治療にお金のかかる病気じゃない。少しでも早く治してここを出て行けばいい。病院は病人がいる場所だ」
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