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月乃さんが本気で怒ってる……怖いから離れておこう。
「だいたい病室で騒ぐな、迷惑だ。とっとと治して早く出てけ」
怖い……絶対に月乃さんを怒らせない様にしないと。
「色縁、後は任せた。俺はいったん帰ってから研究室に戻る。時間があれば後で来い。じゃあな」
「分かりました月乃さん。後で伺います」
白衣を翻して病室を出ていく。僕を含めて誰も言葉を発することが出来なくて月乃さんの足音が聞こえなくなるまで皆黙りこむ。その静かな病室の中で色紫さんが白衣のポケットから包帯を取り出した。目元を下げると暴れた七衣の手元、点滴の包帯が赤く滲む。
「月乃さん怖かった……色縁さん、月乃さんはいつもあんな感じなの?」
「月乃さんは生まれてからずっと医院長、月乃さんの英才教育を受けて育ちました。それと同時に医者とはなんたるかを幼少期から学んできました。助かるのにそれをつまらない理由で捨てる人には遠慮はしませんから月乃さんは。七衣さん、貴方の病気は放っておけば命に関わるのですよ、そんなのあの月乃さんが許すわけが無いでしょ?」
驚くべき手際で血の滲んだ包帯を外して綺麗で清潔な包帯を巻き終わる。その間なんと12秒、さすがは色縁さん。
「さっき月乃さんも仰っていましたが安静にして一日でも早く治してくださいね、病院は長くいて良い場所じゃないですからね。はい、終わりました」
包帯が巻き終わると再びカルテに何か書き込む色縁さん、
「七衣さんには暫く入院してもらいます。親御さんにの今回の趣旨を私の方から伝えますので電話番号を教えてください。お金は心配しないでください、次期医院長候補の月乃さんがああいっているので何の問題もありません。それにさっき月乃さんも仰ってましたがちゃんと安静にしていれば貴方のかかったA型肝炎は早ければ1か月で治ります。高校生最後の夏休みもちゃんと楽しめますから」
「……分かりました。すいません色縁さん、病院で騒いでしまって。それに病気の事はお願いします。月乃さんにもそう伝えておいてください」
「それは直接伝えた方がいいでしょう、あの方はほぼ毎日病院に来ていますから。それに今日は怒っていましたが本当は優しい方です、少し表情が硬くて怖い印象もあって不器用なだけですから」
確かに。にしても色縁さん結構月乃さんの事を酷く言ったね、本人が知ったらどうなる事やら……。
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