アンチヒーロー・ヤンデレヒロイン?

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「それでは少々お待ちください、今電話をしてきますので」 七衣から電話番号を聞いた色縁さんは電話をするために病室を出て行った。ここで電話しても全く問題はないと思うのだけれども、本当に真面目な人だ。 それで自然的にここに残るのは僕と七衣と伊澄君なわけでいつもは自然と話しているのに今日は状況が違う、空気が重い。 「如月君、今日はごめん。そしてありがとう……今思えば少し思いつめすぎたのかもしれない。これも言い訳に聞こえるかもしれないけどね、僕が頑張って働かければどうにかなるかな、両親の負担を少しでも減らせたらなって……そう思ったんだ。それで結局体を壊して両親や如月君に迷惑をかけて、本当にどうしようもないね」 残酷な話だが七衣の行っている事は正しいし思い込みが激しい、歪んだ正義感とまでは言わないが根本的に間違いだらけだ。でもそれが分っているのだから結局は優秀だよ。 「でもそれをちゃんと自己解析して学習できるのだからいいんじゃない? 僕の経験上、人は失敗しないと成長は無いし七衣の行った事は間違いじゃない。後ついでだから言うけど今回の事を僕は迷惑だとは思っていない。月乃さんや色縁さんもきっとそう思っているよ」 「如月君、僕は君がたまに分らなくなる。他人に無関心なふりをするくせに今は優しいんだね」 「体力的にも精神的にも弱っている病人に辛く当たりはしないよ。それに君に関して僕は無関心じゃないしね。僕は優秀な人は好きだ、無能が嫌いじゃないけど話していて面白くないから」 「そう……」 上を向き白い天井を見上げる七衣。 「今日はもうそろそろ僕は帰るけどゆっくりこれからの事を考えると良い。君はその時間が今まで無かっただけだ。数日もあれば本来の君に戻れるさ」 完全に忘れていたけど今日は帰りはバイクの後ろに結月を乗せる約束をしていたのに、なんとなく開いた携帯には着信が20件以上、もう電話に出るのも少し怖い。そろそろ帰らないと。 「分かった、じゃあまた今度。改めて今日はごめんね、また今度改めてお礼はするから」 深く頭を下げる七衣。 「うん、じゃあまた」 「またお見舞いに来ますよ生徒会長っ」 それだけ声をかけて僕と伊澄君は病室、そして病院から出た。日は傾いている、ずいぶんと長居してしまったみたいだ。
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