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「皆、わたくしを慕ってくれているのですから無下にはできません。でも……確かにわたくしもそう感じる事はあります。さて、どうしたものしょうか?」
「だからさ、少し遠くに買い物に行こうと思うんだ。れんとさんあたりに車に借りてさ」
きょうは会社で缶詰とか言ってたし社用車も持ってるから問題は無いと思う。
「車、それは良いですわ! 兄さんと遠くに行くのは久しぶりですわね、4か月ぶりぐらいでして?」
「そうか、もうそんな前になるのか」
バイク1台で2人で鹿児島まで、往復3000キロ弱走ったなあの時は。帰りは本当につらかった。
「あの時は雨が降り出したりさんざんでしたわね。でも温泉入ったりごちそう食べにいったりととても楽しかったな。そうですわ! また2人でご飯を食べに行きませんこと?」
「それって夜まで遊ぶってこと?」
「ご察しなさい? 当然ですわ」
それもいいか、姉さんの娘のいろはは僕の自慢の妹だ。姉さんと一緒で将来は絶対に結月や西野園に並ぶほどの美人になる、僕も鼻が高い。
「じゃあ今日はご飯はいらないって京助や結月に言っとかないとね」
僕がポケットから携帯を取り出そうとすると、
「わ、お待ちになって兄さんっ!!」
携帯はいろはの手によってすぐにポケットに戻された。
「そんなこと言ったら皆、とーくーに、結月は付いてくるに決まってますわ! 連絡は手遅れになってからでいいのです」
一理あるね。
「じゃあそうしようか、じゃあ僕はちょっとれんとさんに電話してみるよ」
携帯電話をれんとさんあてに掛けるとちょうど2コールで出て2つ返事で、
『ええ構いませんよ。地下駐車場に泊まっているので好きなのをご自由にお使いください』
「好きなのを……」
『はい、好きなのを』
盲点だった。社用車どうこうの前にそもそもれんとさんが車を1台しか持ってないわけが無いか。灯台下暗し……。
「分かった、じゃあ1台だけ借りるねれんとさん」
『ええ、お気をつけて。特に夜は危ないので』
それだけ言うと僕が電話を切るのを待っていたみたいだから電話を切る。言葉遣いは丁寧だけどいつもより淡々と話していた。忙しいところごめんねれんとさん。
「で、れんとさんはなんとおっしゃっていて?」
「地下にあるから好きなのを使えって。せっかくだし好きなのを使わせてもらおうか。もう行く?」
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