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僕は出かけようとしていたところだからいつでも行ける。それに行こうと思っていたのは高校じゃ無くて大学の方だから来ているのは制服じゃ無くて私服。だけど、いろはは中学から帰ってきたところだから制服を着ている。聖美月学園は全国的に名前の知れている名門のお嬢様学校。だから隣で制服で歩かれるととっても目立つ。それこそいろはの友達に見つかったら……ね?
それにいろはは制服と私服ではだいぶ印象が違う。学校では伊達眼鏡で清楚を゛演じて゛いるが私服は全然違う。お洒落で流行の最先端を着こなしているらしい、結月談。
「確かに汗ばんでますしシャワーを浴びて着替えてきますわ、暫しお待ちを」
「了解っと」
自分の部屋に戻るいろはを横目に僕は席に着いてなんとなくテレビをつける。いつもと変わらない平凡なニュース、でもなんとなくその画面を眺める。無駄な時間は嫌いだけど暇な時間は嫌いじゃ無い。いろはは風呂好きだからシャワーと言いつつお風呂に入ってそうだし、長いだろうなあ。
「………………」
チャンネルを変えても面白そうな番組は無い、仕方なくテレビを消して立ち上がる。と、
「あれま」
僕たちの住んでいる25階に向かってエレベーターが昇ってくる。この階に住んでいるのはビルの所有者の天明れんとさんの知り合いしかいない。だからこの階に昇るためには部屋に入るのと別のカードキーが必要となる、そもそもこの階の存在を知るのは実際に住んでいる僕達とこのビルの所有者の天明家とその役員だけ。
要するに誰か帰って来たのだ。
「どうしようかな……」
エレベーターがここに着くまであと10秒ほど。れんとさんは忙しそうだったから無いだろうしゆんはこの時間には基本的に大学の研究施設に引きこもっている。時間的には京助か結月が妥当だろう。京助はともかく結月は面倒だ、もしかして両方?
自分の部屋に戻りたいがもしいろはが僕の連絡を見ないで部屋から出たらこういう時だけ勘の良い結月はきっと気づく、それは面倒だ。なら、
「ちょ、兄さん……」
僕は鍵が開いていたいろはの部屋に逃げ込んだ、そこには丁度お風呂から上がってたタオル1枚巻いたいろはと遭遇、鉢合わせ。とっさの行動で後ろからいろはの口を塞ぐ、それぞれの部屋は壁は厚く防音性能もあるけど叫ばれて全く聞こえないほど熱くも無い、頼むから察してくれ、いろは。
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