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「何する気?」
スマホを取り出していじり始めた。誰かに電話をするようだ。
「すぐに解りますわ。……もしもし京助さん? 一緒に結月さんがいますわよね? 結月さんに察されない様に聞いてくださいな。一生のお願いです、どうにかして結月さんをエントランスから剥がしてもらえないでしょうか?」
『剥がす? それはどんな手段で?』
京助の声は電話を通しても部屋の外からも聞こえる。相変わらず大きな声だ。
「それも簡単に察せるのでは? そうですわね……では面白い方法で」
『よく解んねえがやればいいんだな、面白い方法か……よしやってみるか。じゃあな』
「よろしくお願いしますわ京助さん」
スマホを仕舞ったいろはは玄関のドアに耳をつけた。京助がどのような方法で結月を移動させるのかが気になる僕はいろは同様にドアに耳を付ける。
「結月、今の電話三味からだったんだけどさ」
「三味さんから?それでなんと?」
「明日空いてたら二人で遊びにいかないかってさ」
「なんとっ!」
こっちがなんとだよっ!止めろ、絶対面倒な事になるから!
「落ち着いてくださいな兄さん、これも遊びに行くための儚くも残酷な犠牲ですわ」
いろはは僕が動けない様にがっちりとホールドしている、僕の方が間違いなく力があるのに体が全く動かない、背中に回された僕の腕はしっかりと関節を固められ、もう一方の手で口を塞ぐ。
「あんまり暴れると関節が外れましてよ?」
意味解んねえよ、残酷だって分ってんならその手を離せっ!!
「こうしちゃいられない、私は明日のデートの為の服を買いに行かないと、強いられているんだっ!」
誰も強いてねーよっ!
「じゃあ早速行ってきますっ、何処に服を買いに行こうかな」
ダッシュで自分の部屋に戻ったかと思うと数秒後には制服から私服に変わり、
「じゃね、京助くん」
「おお、よく分かんないけど頑張れよ」
すぐにエレベーターに乗り込んで下りて行った。
「なんと仕事の早い、鈍い兄さんは理由も解らないのでしょうけれど」
「理由!? そんなの楽しんでるだけだろ!?」
いろはのこうそく拘束から逃れた僕はそのままドアから転がり出る。コーヒーを飲む京助と目が合い、
「なんだ、三味もいたのか」
「はぁ……遠からずも外れですわ兄さん、やっぱり鈍い」
「ため息つきたいのはこっちだからないろは」
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