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「三味がいろはの部屋にいたのも気になるけど説明してくれるか?」
「兄さんとこれからデートに行こうとしたとそ矢先、京助さんと結月さんが帰ってきまして。もう分かるでしょ?」
「あ、察し……」
「京助さんはどこかの超、鈍感兄さんと違い鈍くなくて本当に助かっています、よしなに」
向かい合ってお辞儀をする2人、なにやってんだか。
「いろは、エレベーター1階まで着いたみたいだね、行くなら早く行こうか」
れんとさんに借りようと思っているけど、ガレージは地下1階にあるから間違えてエントランスで鉢合わせする事は無い。車に乗ってしまえばどうにでもなる。唯一の問題は何かの手違いでまた結月が上ってこないかだ。鉢合わせなんかしたら僕の犠牲含めて全て台無しだ。僕はそれでも構わないけど。
「ですが結月さん、忘れ物等でまた上って来たりしませんかしら。あの人どうしようもなく抜けていますから。本当に面倒」
「まだ未遂なのにとんでもない毒を吐くねいろは」
「未遂で済めばよろしいのですけれどね」
そんな事を呟く目線の先にはエレベーター、異様な速さで上ってくる。
あ、察し……。
僕といろはは無言でそれぞれ自分の部屋に入った(隠れた)。
そして25階に鳴り響くエレベーターの到着音、そして。
「お帰り結月、ずいぶん早いお帰りで」
「いやぁ、興奮のあまり急ぎすぎて財布を忘れちった。面目ない」
部屋の外から聞こえる京助と結月の声。やはり姉さんの娘だ、恐ろしいほど勘がいいな、いろはは。
「それじゃあ結月、再び出陣してきますっ!」
「ああ、交通事故には気をつけろよー」
「了解ですっ!」
刹那、再びエレベーターの閉まる音。しばらくしてからそっと部屋から出る。
「全く結月さんったら、財布を忘れるなんて本当にどうしようもないちゃらんぽらんですこと。考えられませんわ」
こいつは息を吐くように毒を吐くね、ホント。
「財布を忘れることくらいあるでしょ」
なんか結月のフォローをしてしまった。それが原因なのだろうかいろはの機嫌は少しだけ悪くなって、
「それじゃあ兄さんも結月さんと一緒ですわね、似た者同士庇いあうといいですわ」
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