12人が本棚に入れています
本棚に追加
「………………」
結月は僕の事を鈍感だと言うけど僕から言わせて貰えればいろはは繊細と言うか敏感と言うか……なんとも女性は難しいよ。西野園も同じような事を言っていたし。
「………………」
ても目の前のいろはをそのままにしておくわけにもいかない、頬が綺麗に膨らんでいる。
「ほら行くよいろは。買い物に行ってご飯も食べるんでしょ? やることは沢山あるんだから急がないと」
いろはに手を伸ばすとその手を仕方なさそうに掴む。本当に可愛い妹だ。
「仕方ありませんわね、兄さんはわたくしがリードして差し上げないといけませんから」
うん、とってもいい子だ。
手を引くいろはについてエレベータに乗り込む。高速で地下1階まで一気に降りていく。
「地下のトレーニングジムの隣にこんなとこがあったのですね、知りませんでしたわ」
「ここはビルの所有者のれんとさんのガレージだからね。暗証番号を知らないと入れないんだ」
因みに暗証番号はさっきの電話で聞いた。えーっと、11734432っと。
「おおー」
ガレージへの扉のロックが外れる音がした。
「車が沢山ありますわね、スポーツカーにオープンカー、セダンにコンパクトカー、これなんかガルウイングですわよ。どれにしましょうか兄さん」
「じゃあこの軽自動車で」
の僕の指の先には綺麗な緑色をした軽自動車。刹那、いろはの顔色はなんとも腑に落ちないと言わんばかりで、
「660なんて走っていてつまらなくなくて? これなんか軽く3000はありましてよ?」
いろはが指差すスポーツカーは大きくて中を覗いてみたらなんとマニュアル車。……ぶつけたらいくらするんですかねぇ……。
「これ?」
「兄さんの技量ならきっと行けますわよ」
穏やかじゃないね、ホント。
マニュアルなんて……いや、そもそも車の運転が教習所以来だ。
「じゃあこの車で行こうか」
ぶつけたら土下座をしよう、うんそれでいこう。
「鍵は持ってまして?」
「車の中に入っているから好きなのを使ってだって」
運転席に乗り込んだらドアポケットに鍵があることを確認してプッシュエントリー、エンジンをつける。
「うわ、すごい音」
聞いたことのないエンジンの音に驚きながらもクラッチとブレーキを踏んでギアをローに入れる。
「スゥーハー、落ち着いて……」
最初のコメントを投稿しよう!