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「ねえ兄さん、この迷彩のハーフパンツとこの紺色のプリーツスカート、どっちが似合うと思いまして?」
「その2つなら右の迷彩のハーフパンツかな。いろはが目を付けるだけあっていいセンスだよ。それに今年の夏は特に暑いからそのプリーツスカートは蒸れるんじゃないかな?」
「スカートは風が通るので結構涼しいけど……まあここは兄さんの意見を尊重してハーフパンツにしましょう」
クスッと年相応の笑顔を見せる、僕はいろはさんが楽しそうで何よりです。
そんな訳で僕の運転でなんとかショッピングモールにたどり着いた。まさか駐車だけであんなに汗を掻くものとは思わなかった。
そして今はいろはと2人でいろんなブランドの服を見て回っている。僕は(自分の含め)服装は使い勝手で選んでいるからファッションと言う物が全く持って分らない。だけどいろはが僕に意見を求めてくれるならそれに答えるだけだ。参考にしてくれるならそりゃあ嬉しいし。
「下がそのパンツなら上はこれはどう?」
飾ってあった赤いVネックのシャツとこれまた黒い革のブーツ、更に黒いボタン式のシャツ。ついでに薄い色のサングラスをシャツにかけた。
「どうかな?」
個室で試着した自分の姿を大きな備え付けの鏡でまじまじと見ていた。
「……パンクファッションに近いコーディネートですわね。成る程、悪くありませんわ、買いましょう」
おっ、悪く無かったみたい。いろはが毒を吐かないのは大変に機嫌が良いのだろう。ほら、いろはの毒は地味に心に刺さるから。
「じゃあこのお店はこの服を買ってそのまま着て次の店に行きましょ」
本当に相当気にいったみたい。
「でもそれこそ誰が試着したか分らないから一回洗ってから着た方が……」
「全然、全く持って問題ありませんわ。今の私は大変に気分が良いですから」
わけが分らないよ。
「それじゃあ飲み物でも飲んで少しお待ちになっていてください。私はタグをこれを買って来ますので」
「りょうかい」
「すいません、この服すぐ着たいのでタグを取って貰っても宜しいでしょうか?」
「はい、かしこまりました」
あんなにテンションの高いいろはは本当に珍しい。4月の初めに一緒にプリクラを取った時以来だろう。僕はお店の入り口近くにあるサングラスや中折れ帽を何となく鑑賞しながら、いろはが買った服に着替えるのを待つ。
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