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この帽子とかは似合うかも?
「うーん、悪く無いセンスではありますけどその服装には似合いませんね。買うだけ買って後日、組み合わせてみたらどうでしょう?」
「いろは……」
後ろには早くも着替え終わったいろはが腕を組んで真面目な顔で僕の服装と帽子を見比べていた。
「いや、いいよ。なんとなく見ていただけだから。それで次はどうする?」
「この店から少し行った所にもう1つ有名なブランドのお店がありますの。そこに行きたいと」
「分かった。じゃあ行こうか」
いろはの着替えが入った紙袋を持ってお店の外に出る、外は夏らしく暑く湿度もそこそこ高い。汗を掻かない程度にゆっくり歩いて次の店に行こう、それが良い。
「それで次の店までどれくらいかかるの?」
「わたくしも始めて行きますからね、こっち方面なので歩きながら……」
スマートフォンで行先を調べていのだろう、地図を見ながらゆっくりと歩いて行く。
「こちらですわ、着いて来てください」
「ちゃんと前も見て歩いてね、危ないから」
「了解」
人混みの中ゆっくりと歩いて行く。1メートルくらい後ろを歩きながらいろはの後ろ姿を眺めるけどなんでだろう、後ろ姿だけでいろはに魅力を感じる。絶対に凄く美人になるだろう、兄として誇らしいと言うかどこか寂しいと言うか……
「兄さん、後頭部あたりに凄く視線を感じますわ」
「いろは、前見ないと危ないよ」
振り返りジト目で見上げてくる。目線をそらしていたらまた前を向いて歩きだした。
「……どうやら10分かからないぐらいで着きそうです、このゆっくりな速度での話ですわ」
10分か、なら比較的近い、か。汗かかなくて済みそうだ。でも自動販売機か何処かで飲み物でも買おうかな。でも荷物が増えるのは嫌だな。まぁいいか。
人が多くてごみごみとしていた。いや、この中で誰が一番ゴミかと言われれば満場一致で僕なのだろうけど。でも人混みは好きじゃない。人間関係に友好的な人間じゃ無いからすれ違いにぶつかるみたいなのがどうも良く対処できない。
なにか何が言いたいかと言えば僕は人混みの中で通行人に肩をぶつけてしまったのだ。それも、
「あれ、三味さんにいはちゃんだ」
佐倉結月と言う人間に。
「げっ、マジか……」
いろはの表情はそれはもう苦虫を噛み潰したように絶望的な表情をしていた。
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