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そんなわけで今日の夕食はいろはの希望もあってとあるホテルの洒落たブッフェレストランになった。野菜中心で最近、女性に人気のレストランみたいなんだけど……正直、自分が浮いている気がしてならない。服装的な意味で。
周りで食事を楽しんでいるのは女子会を楽しんでいる女性メンバーとカップルのみ、少なくとも男性客のみの来店は無いみたいだ。もっとも僕も京介や生徒会長の純一、それに伊澄君達とは絶対に来ないだろう。あ、でもれんとさんに誘われたら行くかも。あの人恰好いいし絵になると思う。まあ行かないけどね。
「兄さん、いつにも増してお顔が酷いみたいですけど、どうかされまして?」
あ、いろはの僕の顔への認識はそうなんだね。
「……少し考え事をしていただけだよ」
凄いよいろはは、その眩しい笑顔で恐ろしい毒舌を息をするように吐くから。僕にはまねできない
「……兄さんは考え事がすぐ顔に出ますわね、どうせわたくしの悪口に関してではなくて?」
「うん、それ正解」
そんな僕にいろははため息を吐いてサラダをフォークで指しながら少し笑って、
「思ったことダダ漏れって意味ないじゃん、馬鹿だね兄さんは。それが兄さんらしいね。フフフ……」
あ、いろはが素に戻った。そう考えるとその笑顔は少し小悪魔的に見えてきて、
「分かりやすくて騙しやすそうで、ね?」
間違ってないね。
「素に戻ってるよ、いろは」
「ん?」
口の中の食べ物を飲み込んでから、何を今更と言いたそうな顔で、
「いいよ別に。ここにいる知り合いは兄さんだけだし、それに兄さんと姉さんぐらいには素の自分出さないと本当の自分を忘れちゃうかもしれないじゃない。それって寂しくない? 鈍感な兄さんには解んないか、ごめん」
「惨めになるから謝るな。でも言われてみたらそうか、今の君に猫を被る必要なんてないもんね」
いろはが猫を被っている理由は想像以上に重い。詳しくは語らないけどいろはが僕以上に苦労してきたのはよく知っている。
「これからも猫を被る気なの?」
「ん? そんなの当たり前じゃん、学校でも私はそのキャラで通ってるし。ってかこの話前もした気がするんですど?」
いろははその会話の内容にはさほど興味が無いのか口直しのコーヒーを飲んでいた。
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