アンチヒーロー・ヤンデレヒロイン?

33/77
前へ
/312ページ
次へ
「勘違いしないで兄さん、ただの毒だから」 「うん、知ってた」 いろはの口からは毒が漏れ続けている。 「そうだね……ええ、兄さんの問に答えるなら高校に入っても『猫』は被り続けるよ。その方が面白いだろうしそれに……」 そこで歯切れが悪くなるいろは。顔はさっきまでと違いどんどんと憂鬱になり、 「私を心から慕ってくれている中学の友達、特に同級生の部活仲間は私が来年、東風学園高等部に入ると話したら数人は一緒に入ってくるって言ってさ、はぁ……」 「あー、さいですか」 いろはは友達なんてオブラートに包んだ発言をしたが第三者の僕から見たらあれは信者に近い。宗教の信仰ほどは無いけどアイドルを追っかけるファンぐらいはある、言葉通り信者だ。着いて来るに決まっている、考えてみれば当然の行動だ。 「高校に入っていきなり性格変わったら友達も戸惑うでしょ、うん、高校デビューじゃないんだよ」 グラスに入っているアイスコーヒーを無意味にストローでかき混ぜる。氷が他の氷に当たって小気味良い音がした。 「はい、これが兄さんの求めていた結果? ならもっと有意義な話をしましょうか。うん、それが良いでしょう」 いろはの憂鬱な顔がまだ完全に治ってはいなかった。どうやら今はこの話から逃げたいらしい。本当に良い友達を持ったようで本当に愉快だ。 「納得したよ。仕方ないね。でも本当に残念だよ、いろはと一緒に学校に通えないのは」 高校生のいろはか……きっと今よりもっと姉さんに近い容姿になるに違いない。それに来年になればカトレア(母)さんと一緒にカトレアさんの故郷のイギリスに行った僕の双子の弟と妹、由羽と空が帰って来る。あー、空はともかく弟の由羽は絶対確実に間違いなくいろはとはウマが合わない。 これは絶対に面白い事になる。負けず嫌いで純粋(単純)な由羽と毒たれ流しで本性は少しだけ歪んでいるいろは。ウマが合うわけが無い。見たかったなー。 「やっぱり兄さんはロリコンですね。いや違う、シスコンだっけ?」 「うんシスコン」 即答出来る。でも、 「あー分ってるから言わなくていいよ兄さん、ええ知ってる。兄さんは私のお母さんが好きなんでしょ?」 「そうだよ」 likeじゃない、どちらかと言えばlove寄りだろう。僕の姉さんはそれだけ素敵な人間だったから。唯一無二の心から尊敬出来る人なのだから。
/312ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加