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あまりに会話の流れにのって話すから僕の笑みも自然に消える、いきなりここまでシリアスになるなんてね。
「いろは、何処にいる?」
僕達はもうアパートの目の前の道路の赤信号で止まっている。なんだろう、空気が変わる。
「この車の左斜め後ろ、たぶん助手席側のサイドミラーから見えますわよ」
その言葉に一気に緊張が増した、僕はいろはの言葉の通りにサイドミラーを除いた。そこには
「久しぶりですねぇ、如月三味。フフフフフ……」
車の中だ、勿論言葉なんて聞こえない。だけどサイドミラーに映った少女、いろはが言った通り空色の長い髪を持った小柄な少女の口はそう動いた。あいつは……
「光咲かっ!」
僕はその少女を知っていた。いや、知っていたと言うより一度だけ会った事があるだけだが。そして光咲は僕(この車)に銃のようなものを向けた。
「やばいやばいっ!!」
青信号になったとたん、一気にアクセルを踏み込んで少女の銃の死角に入った。
「ああ、どこかで見た事があると思ったら結愛(ゆらら)ですわね」
助手席から体をよじらして後ろに辛うじて見える光咲を面白そうに見ていた。
「銃を向けられているのに楽しそうだねいろはっ」
「ええ、だってあれ玩具ですわよね?」
今度は楽しそうにスマホを弄り始めた。
「どうしてそう思うのっ?」
僕の目から見てもあの銃は玩具、その意見はいろはと合った事により少しばかりの安堵感を生んだ。
「結愛はどうやら1、2発発砲していますが音が聞こえません。火薬の匂いも白煙も見えないし何よあんな小柄な結愛が片手で撃てるなんて思えませんわ、反動も殆どありませんでしたし」
恐るべし中学生、ミリオタだって驚きの名推理だった。
「うん、僕もそう思う。たぶんあれはゴム弾だよ」
「ん? 何故ゴム弾だと思いまして?」
この距離からは光咲の持っている武器が銃なのは分かるけどその銃の性質までは確認できない、でも僕には確信があった。
「後で説明するよ」
「そうですの、では私からも兄さんに一言」
「なに?」
「れんとさんから借りたこの車の事を少し調べてみたのですが値段が1300万円するみたいです。それもモータースポーツメーカーが特殊チューンした限定品みたいですわよ?」
…………、
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