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さっそく真鯛の味噌煮を箸でつまんで一口、感想を聞かせろと言わんばかりの結月の視線が突き刺さってとても食べづらい。
「どう、どう?」
鬱陶しいな。
「フツウに美味しいよ」
「普通が片言なのがとても気になるけどとりあえずよっしゃー、星頂きました!」
結月の料理の特徴として少し味付けが濃いのだがそれは一般の範疇を抜け出さない程度だから問題ない、普通に美味しい。……料理がさほど得意ではない僕が評価するのも変な話だが……昔ご飯を作ってくれていた人が上手すぎてどうしても劣って見えるのだ。
「マッチーにお願いして料理の修行した甲斐があったよー」
「マッチー?」
結月が言っている人が誰なのかおそらく予想はつくが初めて聞くあだ名だぞ。
「……結月さん、それはご本人の許可を頂いているのですか?」
「私が今決めたっ!」
安定的に自由人だな……それが彼女の魅力なのだろうが。僕が言えることは1つなわけで、
「それ絶対に本人に使うなよ、恐らく殺されるぞ」
「あ、やっぱし?」
自由人ゆえにいつもは慎重なくせにたまに後先考えないで行動する癖がある。基本的にノーフューチャーの精神の持ち主で彼女の場合、育ってきた環境が特殊すぎるので仕方がないと言ってしまえばそれまでだが……とりあえず僕は釘を刺したからな。
「ついでに申し上げるならネーミングセンスをまるで感じませんわ」
いろはの鋭いダメ出し、正論だと思うし何より面白いからいいや。
「うーん、じゃあなんてあだ名をつけようかな……」
まだ止めないか、
「そもそもそんなに仲が良かったか?」
あだ名で呼び会うような仲じゃなかったことだけは確かだ。
「私は親友だと思ってるよ?」
「一方的……歪んでいますわ」
会って1ヶ月ちょいの人間によく親友って言えるな。しかも一方的と来ましたか。
「……使うなら本人の許可をとれよ」
取れるものなら……。
「大丈夫だと思うんだけどなぁ……」
その根拠の無い自信はどこから来るのやら。
それにしてもマッチーかもしもう一度会えるのであれば……今度そう呼んでみよう。どんな反応するかちょっと楽しみだし怒ったら責任は全部結月に押し付けちゃえば。
「兄さん、悪い顔してますわよ」
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