大家族

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財閥の継承については僕よりもずっと優秀な二人がいる、その二人が共に財閥を継いでくれたら半世紀は繁栄するだろう。だが僕も最低限は学ばなくちゃ。それは使命感とかじゃ無くてもっと根本的なものだから。 「それはそうと三味さん、今から昼食に行こうと思うのですが一緒にいかがです?」 断る理由なんて探しても無い。 「是非」 社長室を出て綺麗で静かな廊下を歩くと足音が良く響く。余談だが会社に来ているのだから僕もそれ相応の格好はしている。 「三味さんは和洋中どれがこのみでしょうか?」 「どれも好きだけどあえて選ぶなら……洋食かな」 和食は物足りないし中華はなんか晩御飯って勝手なイメージがある、何より洋食が好きだしね。 「では美味しいパスタの店を紹介しますよ」 エレベーターに乗り込んできつく絞めていたネクタイを緩めてスーツを脱いでシャツ姿になる。朝は寒かったが太陽が昇っていくにつれどんどんと暑くなり横にいるれんとさんの首筋には汗が浮かんでいた。 「ふぅ……人に見られていると疲れますよ」 エレベーターの中でそんな発言をするあたり本当に疲れているのだろう。こんな場所で見られることなんてほとんど無いのだから。 「意外だな、れんとさんってどんな場所でも完璧に振る舞えるイメージがあるんだけど」 「ははは、勘弁してください……社長なんて言ったら聞えは良いかもしれませんが実際はほとんど歳上の部下と付き合っていかなきゃならないんですよ。財閥の血族とはいえ不快に思っている方もいるはずです」 ガラス越しで中が見えるようになっているここの社長室。実はここは本社じゃなくて本社別館みたいな場所だ(支店ではない)。本社にはれんとさんのお父さんが会長として仕事を仕切っているのでれんとさんは実質は社会勉強のようなものだ。だがその社会勉強でれんとさんが残した実績も確かで大成功としか言い様のないものだ。この建物も販売1週間ほどでほぼ全てのテナントと住居が埋まりその勢いは他の不動産を脅かしているに違いない。 「私も2年前まではただの大学生だったのです。それがいきなり社長として仕事をしてみろですよ?」 愚痴るれんとさんも爽やかだった。
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