大家族

23/45

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/312ページ
「大学に戻りたいですよ全く……月乃が羨ましい」 「今年から大学院でしたっけ?」 「ええ、そうですよ」 風舞月乃、さっきも出てきたが僕やれんとさんのいとこ。れんとさんの一つ下で僕より四つ上。ぶっきらぼうで少し言葉使いは悪いが落ち着いていて素はよい人。僕はあまり会ったことがないのだがれんとさんとは兄妹のような仲らしい。 「大学終わり間近になって就活を皆始めますが働きたいと思っている人は少数だと思でしょう。授業が面倒だとサボる人がいますが社会人になったらそんなのは許されないわけで皆苦労するわけです。私がそうでしたから良く分かります」 「れんとさん、授業サボってたの?」 だったら凄く意外。 「いえ、そうではなくて僕も卒業していきなり社会の荒波にのまれて苦労したって話ですよ。中学や高校の頃は早く大人になって働きたい、自立したいとかそんな考えで頭がいっぱいになっていました。でも大学卒業が迫ると心の中に甘えがでるのです。もう少しだけこの時間を過ごしていたいと。他の友達が就活をしている中、私は仕事が決まっていました。それをそれを吉と取るか凶と取るかはその人自身の考えですが私は吉と捉えることにしました。でも決められた豪華な線路を走るのもなかなか骨が折れるんですよ?」 高校生の僕が言えた事では無いが他人が就活をしている時間にれんとさんはそれ以上の業界研究をしてきたのだろう。 「従業員2000人の頂点に立つのですから……最初はプレッシャーに押し潰されるかと思いましたよ、メンタルの強さには自信があったのですが」 「それでもれんとさんはちゃんと経営者として普通以上の仕事をしていると思うけど」 素人目から見ても分かるれんとさんの優れた経営采配、優秀なを通り越して天才だ。 「普通以上ですか……どれだけ努力しても上には上がいますから。如月不動産はまだ世界で三位です」 「創設三十年でシェア三位なら十分でしょ?」 「それはあくまで私の父さんや立夏さんの力であって私は何もしていませんよ」 その言い方は謙虚を通り越して嫌味にも聞こえる。 「私はこの会社をトップにしたい、それが私の如月立夏さんへの恩返しとなればと思います」
/312ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加