大家族

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音と共にエレベーターは1階に着く。 「それでは続きは食事をしながらでも話しましょう」 ビルを出て近くの店に入る。適当そうだが味は確かな店が多くれんとさんのセンスが伺える、あと安い。案内された店で席についてとりあえずコーヒーを二つ。 「それで、何の話をしていましたかな?」 笑顔でそう切り開くれんとさん。忘れていたがこの人は少なからず天然なところがある。 「れんとさんの好きな話でいいよ。どんな話でもれんとさんのは為になるから」 「そうですか?ならいつもと思考を変えて世間話をしましょうか」 何時もは勉強に近い話をよくされた。それでも僕には興味深い話の数々で楽しく聞かせてもらっていたのだ。 「三味さんはいつから学校が始まるのでしょうか」 「明後日から新学年、三年だね」 「楽しみ?」 腕を組んで楽しそうに話すれんとさんに答える。そうだな……どっちかと言えば、 「楽しみ」 青春は人生で最も楽しい時期だと言われている。だがそんな時間を僕はまだ送る事が出来ていない、じゃあ今日までの数年間は何をしていたのと聞かれたら……人生ですからいろいろあった訳ですよ。だから僕はこう答えた、楽しみって。 「そうですか、それは良かった。三味さんってもっと別のものを見て生きているイメージがあったのですが……あ、決して馬鹿にしているわけではないんですよ。私は大学時代こそ楽しかったものの高校時代はひたすら勉強づめで楽しい思い出があまり無いもので」 れんとさんのことだからきっと使命感に追われて勉強一筋の三年間だったんだろうな、僕も勉強はするけどそれは単なる暇潰しで嫌になるまでする事は無いから。 因みにこれは余談だが昔妹が勉強をしていたから、 「勉強?偉いね」 って言ったら、 「これは勉強じゃ無くて宿題だよ三味にぃ」 と言われた事がある。宿題も勉強に含まれるものじゃないの?もし違うなら日本語って難しいよね。国語の成績は毎回5をもらうけど国語と日本語は別ものだから。だから勉強は面白い、自分に知識がついていく事に喜びを覚える僕は変人なのだろうか。 「何か考え事ですか?」 「なんでもないよ」 この話は少し躊躇うものがある、自分が一般世間とずれていたら嫌だから。
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