大家族

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コーヒーを二つ運んで来てくれたウェイトレスさんに僕達はそれぞれカルボナーラとイカスミパスタを注文、それぞれコーヒーを一口含む。鼻から抜けていく薫りがなんともたまらなかった。正直コーヒーの銘柄なんてさっぱり解らないけど美味しい事に変わりはない。 「れんとさんは今の生活で満足しているの?」 なんの脈絡もなくいきなりだったが僕は昔から思っていたことをれんとさんにぶつけてみた。 「いきなりですね。満足と言うと?」 「れんとさんは家を継ぐと言う意味ではもう一つの道があったわけだよね、どうしてこっちに?やつぱり使命感なのかなーって」 天明和也(てんみょうかずなり)、これはれんとさんの父親の名前、そして母親は鈴鹿(すずか)だ(旧名は北大路、つまり今は天明鈴鹿だが昔は北大路鈴鹿)。名字は天明となっているが実は和也さんは僕の父さんの弟だから本来は如月和也となる。しかし父さんの考えで後継者争いが起こらないようにと父さん以外の兄弟三人はそれぞれ天明、風舞、山吹と名字を変えた。 それはさておきれんとさんの母親の話だが実家は神社をやっていて今は鈴鹿さんのお兄さんが神主をやっているが未婚で跡継ぎがいないのだ。だかられんとさんは如月不動産ではなくそちらを継ぐことも出来るって話なのだ。 「多少の迷いはありましたがやはり男として生まれたからには大きな舞台で活躍してみたいと言うのはありましたから」 「意外だな、そんな感情を持つなんて」 「私らしくないと?」 「うん」 するとれんとさんはまた少し笑って、 「根の部分はどんな人間も同じでそれは私も変わりません。それに礼儀作法とかを考えたら私などより文香(ふみか)の方が的確でしょう」 天明文香、れんとさんの妹で今年から中学生に上がる。以前一度だけ会ったことがあるが彼女は寝ていた為正直どんな人なのか知らない、可愛かったとだけ行っておく。 「出来れば男性が継いだ方が良いのかもしれませんが人間には適材適所と言う言葉があってですね……」 れんとさんなら十分以上に務めを果たすことが出来ると思うんだけどな。本人がああ言っている以上これ以上の口出しは無意味だろう。 「頼もしいよれんとさん、優秀な人と将来的には一緒に財閥を盛り上げることができるんだから」 「恐縮です三味さん、ですが……行きすぎた謙遜は嫌味にもなりますよ」
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