大家族

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「嫌み?」 あまり良い印象を受ける言葉では無いがれんとさんが無意味に発言をするわけがないからな。 「今までいろんな人と出会って来ましたがやはり貴方ほど才能に恵まれた人は見たことがありません。貴方は確実に立夏さんを越えて行くでしょう」 才能? 「僕はただの高校生でまだ何もしていないよ。世間一般では親の七光りとも言われているしそれにれんとさんみたいに実績を残したわけでもないんだ。百歩譲って僕に才能があったとしてまだそれを発揮できる場所すら無いんだから」 れんとさんみたいに活躍しているわけでもない、僕なんかが何かしたところで親の七光りと言われても仕方がない程度の能力だ。 「それに僕よりももっと優秀な人がいるよ」 「優秀な人?貴方より優秀な人間となると限られてくるのですが……それにどれほど優秀でも如月家の血を継いでいることが大事になるのです。じゃないと財閥グループの心を繋ぎ止めておく事が出来ないのですから」 「大丈夫だよ、ちゃんと父さんの血を継いでいるから。れんとさんも知っているでしょ?」 「……もしかしていろはさんの事を言っていますか?」 「正解」 正直なところ僕は財閥を継ぐことにあまり乗り気じゃない。僕の人生のお手本となった人がいるんだけどその人は誰よりも自由な人だった。その人に魅力された僕はなんでも自分で作ってみたいと思ったんだ、お金も地位も権力も恋人も。だから敷かれたレールを走るのはあまり気が進まない。それをれんとさんは察しているのかいないのか、多分前者だが財閥の為に働いてくれているれんとさんを目の前にそれを切り出すのはかなりの勇気が必要だ。僕にはそれが無い……。 「いろはさんは確かに魅力的で優秀な人材と言えるでしょう。ですかどれだけ才能を持った人間だったとしてもやはり如月立夏さんの長男である貴方には敵いません。長男であると言うだけでかなりのステイタスになるのですから」 ……第一いろはは性格上は僕と似ている所があるから決して継ぐとは言わないだろうし。 父が偉大すぎると息子は苦労するね、僕のような汚れた人間が財閥を継いでも良いのだろうか……。 「財閥が一枚岩で無い今、その心を繋ぎ留めるには貴方が必要なのです。それだけは心に留めておいてください」 れんとさんはいつも通り微笑んだ。
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