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翌日、つまりは春休み最終日。
僕達の学校は春休みに宿題は無いから追われる事無く春休み最終日を満喫するはずだった。……満喫と言っても家でゴロゴロするだけだけど。だが僕の最終日はなかなか憂鬱なものとなっていた。
「しゃみー」
「なに?」
「あとどれぐらいで終わるかなー」
「……知らない」
僕達の後ろ、体育館の中で行われている入学式を見ると最近生え際が後退した校長先生が長々とこれまた憂鬱になりそうな話を淡々と続けている。新入生諸君は初日からつまらないかもしれないが別にうちの校長もやりたくてやっているわけじゃないんだ、我慢してくれ。
「……校長話が長いので有名だかんなー」
「そうなの?」
「しらね」
「……あっそ」
入学パンフレットの項目を見る限りではあと1時間弱は入学式続くだろう。
「俺達の時もこんな感じだったっけ?」
「……入学式サボったから解んない」
だって面倒。
「さすがは天下の如月財閥の御曹司、俺達には出来ないことをなんなりと」
「財閥関係ないでしょ」
こいつはいつもいつも……。しゃがみながら退屈そうにあくびをしていたが立ち上がって背伸びを始めた。
「暇すぎるわ、ちょい飲み物買ってくる」
「僕コーヒーね京助」
「了解」
壁を曲がって背中が見えなくなる。一人だといよいよ本当に暇だよな、携帯弄ったら怒られそうだし……退屈は人をダメにするんだけどな。
相川京助、それが彼の名前。京助と初めて会ったのは高校の入学式で当時人と絡むのが嫌いな僕にしつこいぐらい話しかけてきたのを覚えている。不真面目でめんどくさがりだが努力家で義理に厚い。顔も良く文武両々、変に気取っていないから男女隔たりなく人気がある。
「お待たせー」
自動販売機が近い事もあるが京助はすぐに帰ってきた。だが……
「………………」
身長の高い京助に隠れてよく見えないがその後ろには見覚えのあるベージュ色のツインテールがヒョコヒョコと見え隠れしていた。
「ん?どうした三味」
本人は気づいていないのか僕にブラックの缶コーヒーを手渡す。
「京助後ろ」
「うん?」
すぐに振り向いた京助絶句した。
「ヤッホー、良かったぁ……やっと会えたぁっ!」
「いつのまにっ!?」
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