12人が本棚に入れています
本棚に追加
/312ページ
新入生には酷く憂鬱であっただろう入学式は終わりその新入生及び保護者の方をクラスまで案内することで僕達の仕事は終わった。今年、中学から上がってきた彼等を見ているとやはり幾分かの幼さを感じる。いや、若さって良いよね。
「私達も十分に若いでしょ……」
ふと口にしたその言葉は見事結月に拾われてツッコミをくらった。
「あと数年で二十歳だよ、中学までが義務教育ってなってるけど実際は高校までみたいなものだと思うんだ。あと1年でその高校も卒業となった今いよいよ未来の事が現実になるわけで……」
駄目だ、話していてどんどん頭が重くなる。現実って時に残酷だよね。
「世紀末みたいな顔になってんぞ三味、もっと気楽に行こうぜ。とりあえず美味しいものを食べて」
「そうだよ。私、お腹が空きすぎでもう倒れそう」
かってに倒れてろ。
「そうだね、食べようか」
学校を出て僕達はよく行くカレー専門店に来ている。京助は無類のカレー好きだから平日はほぼ毎日カレーを食べている。因みにこれは余談だが僕と京助はバイクで学校に通っている。結月はバスで来たらしくてこれは引き剥がすチャンスだと少なからず考えたのだがそうはいかなかった。なんとも準備のいい京助はメットを2つ持っていてそれを頭に装着したかと思うと迷いなく僕の後ろに乗ってきた。
「京助の後ろに乗れば?」
「気にしないでいいよ、三味さんのバイクの方が座席幅広くて乗りやすいからさー」
さいですか。
横でまたもや必死に笑いをこらえている京助がいた。フルフェイスのヘルメットであまり表情は見えないが僕と京助のヘルメットには通信機が着いていて笑い声がまる聞こえなのだ。
「京助」
「悪い悪い、三味と結月なんて言うか波長が近いのか?見ててすっげー面白いんだけど」
悪意を感じるコメントだったがもはや何も言うまい……なんか話すのが疲れてきた。
「三味さん疲れてる?」
「おかげさまで」
結月から変なボケが帰ってくるのは分かっていたのでさっさとバイクを発進させた。手を離していた結月は見事にバランスを崩して落ちそうになるところを僕のお腹に手を回すことによって回避する。
「あっぶなっ!」
最初のコメントを投稿しよう!